このブログ記事では、Graphics Double Data Rate(一般的にはGDDRとして知られる)について知っておくべきすべてを紹介します。
2000年の登場以来、GDDRはグラフィックスカード向けの主要なメモリ技術として進化を続けてきました。
GDDR2から始まり、最新のGDDR7に至るまで、複数の世代を経て、高度な映像処理や計算処理に対応するための速度と効率を飛躍的に向上させてきました。
それでは、以下のブログでGDDRについて知っておくべきすべてを詳しく見ていきましょう。
コンテンツ一覧:
- GDDRとは?
- DDRとGDDR、どちらが速いのか?
- GDDR7はいつ発売されたのか?
- GDDR7の主な機能
- GDDR6とGDDR7の違いは?
- GDDR6XとGDDR7の違いは?
- GDDR7とHBM3の違いは?
- GDDR7 and LPDDR5の違いは?
- GDDR7はどのようにしてAI推論性能を飛躍的に向上させるのか?
- まとめ
GDDRとは?
GDDRは「Graphics Double Data Rate(グラフィックスダブルデータレート)」の略です。これは、グラフィックス処理ユニット(GPU)専用に設計された特殊な種類のメモリであり、現代のグラフィック描画や計算処理に必要な大量のデータ転送に対応するため、高い帯域幅を提供するように作られています。
一般的なシステムタスクやCPUに使用される標準的なDDR(ダブルデータレート)メモリとは異なり、GDDRはゲーム、3Dレンダリング、AI処理などの並列処理と高速なデータスループットが求められる用途に最適化されています。
現在、GDDRは最先端のメモリソリューションへと進化しており、最新のGDDR7仕様では、1ピンあたり最大48Gbpsの速度と、1デバイスあたり192GB/sの帯域幅を実現しています。
GDDRはゲーム用途を超えて、AIアクセラレータや高帯域幅を必要とするGPU向けのソリューションとしても活用されており、AI推論などの負荷の高い処理に対応しています。
最新世代のGPUやAIシステムは、これらの高度なアプリケーションの性能要件を満たすために、GDDR7を活用しています。
DDRとGDDR、どちらが速いのか?
GDDRメモリは、帯域幅とデータ転送速度の面でDDRメモリよりも高速です。GDDRはグラフィックスカードやGPU向けに特化して設計されており、高解像度のテクスチャや複雑な3Dモデルなど、大量のグラフィックスデータを処理するために高い帯域幅を優先しています。
一方、DDRメモリはCPUによって管理される一般的なコンピューティングタスク向けに最適化されており、帯域幅よりも低レイテンシ(遅延の少なさ)を重視しています。
たとえば、最新のGDDR7メモリは、1ピンあたり最大48Gbpsの速度と、メモリサブシステム全体で最大1.5テラバイト/秒の帯域幅を実現できます。一方、DDR5(主流のDDR規格で最も高速なもの)は、通常1ピンあたり4.8〜8.4Gbpsのデータレートで動作します。
このため、GDDRはGPU向けのワークロードにおいて圧倒的に高速ですが、DDRはCPUやマルチタスク環境において、レイテンシ(遅延)や電力効率の面で優位性があります。
GDDR7はいつ発売されたのか?
JEDECは、2024年3月にGDDR7の規格を公開し、メモリメーカー各社は2025年に量産体制へと移行しました。
GDDR7の主な特徴
- 超高速:
GDDR7は初期の段階で、1ピンあたり最大32Gbpsのデータレートに対応しており、将来的には48Gbpsまで拡張されるロードマップが示されています。これは、最大21Gbpsの速度にとどまる前世代のGDDR6Xと比べて、実効速度が2倍以上となります。 - 卓越した帯域幅:
GDDR7の各デバイスは、32Gbpsの速度で128GB/sの帯域幅を提供でき、48Gbpsの場合は192GB/sに達します。これにより、AI推論や次世代グラフィックスなど、データ集約型のワークロードに必要なスループットが確保されます。
- 高度な信号方式(PAM3):
GDDR7では、3レベルのパルス振幅変調(PAM3)方式が導入されており、従来世代で使用されていたNRZ(PAM2)と比べて、1クロックサイクルあたり50%多くのデータを送信できます。この革新により、クロック速度を上げることなくより高いデータレートを実現でき、効率が向上するとともに、信号の整合性に関する課題も軽減されます。 - 低電圧と高効率:
GDDR7は1.2Vで動作し、1.35Vで動作するGDDR6Xよりも電力効率が高くなっています。これにより、より高い性能を維持しながら、システム全体の消費電力を抑えることが可能になります。 - 信頼性とRAS機能の強化:
GDDR7は、オンダイECC(誤り訂正符号)のリアルタイムレポート、データ破損検出、エラーチェックとスクラブ、コマンドアドレスのパリティおよびコマンドブロッキングなど、高度なデータ整合性機能を備えています。これらの機能により、信頼性(Reliability)、可用性(Availability)、保守性(Serviceability)—いわゆるRAS—が向上し、ミッションクリティカルなAIやグラフィックス用途において重要な役割を果たします。 - チャネル並列性の向上:
GDDR7では、GDDR6の2つの16ビットチャネルから、4つの10ビットチャネル(8ビットのデータ+2ビットのエラーレポート)へと構成が変更されており、より高い並列性と効率的なデータ処理が可能になっています。 - JEDECによる標準化:
GDDR7はJEDECによって承認されたオープン規格であり、業界全体での広範なサポートと相互運用性が保証されています。
これらの機能により、GDDR7は最先端のメモリソリューションとなり、最新のAI、ゲーム、グラフィックス向けワークロードに必要な高帯域幅、効率性、信頼性を提供します。
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GDDR6とGDDR7の違いとは?
GDDR7は、GDDR6からの大幅なアップグレードを示しており、より高い性能、改善された効率性、そして先進的な機能を提供します。最も顕著な違いはその速度であり、GDDR7は1ピンあたり最大48Gbpsのデータレートを実現し、GDDR6の最大24Gbpsと比較して2倍の帯域幅を提供します。これにより、AI推論、ゲーム、高解像度レンダリングなどの負荷の高いアプリケーションにおいて、より高速なデータアクセスと処理が可能になります。
さらに、GDDR7はPAM3信号方式を採用しており、GDDR6のNRZ(PAM2)エンコーディングと比べて、1クロックサイクルあたり50%多くのデータを送信できます。また、GDDR7はより低い電圧(1.1〜1.2V)で動作し、GDDR6の1.35Vと比べて1ビットあたりの電力効率が向上しています。
加えて、GDDR7は1チップあたり4つの8ビットチャネル(GDDR6は2つの16ビットチャネル)を備えており、並列性が向上し、リアルタイム処理におけるレイテンシの低減にも貢献します。
| Features | GDDR6 | GDDR7 |
|---|---|---|
| Data Rate | Up to 24 Gbps | Up to 48 Gbps |
| Bandwidth per Device | Up to 96 GB/s | Up to 192 GB/s |
| Voltage | 1.35V | 1.1–1.2V |
| Signaling | NRZ (PAM2) | PAM3 |
| Channels/Chip | Two 16-bit channels | Four 8-bit channels |
| Use Cases | High-end gaming, VR | AI workloads, 8K+ gaming |
GDDR6XとGDDR7の違いは何ですか?
こちらは GDDR6X の特徴と仕様についてのまとめです。GDDR7との違いを理解するための基礎として役立ちます。
GDDR6xとは?
GDDR6Xは、高性能なグラフィックスメモリ規格であり、要求の厳しいGPUアプリケーション向けに、GDDR6よりも高速なデータ転送速度とより大きなメモリ帯域幅を提供するよう設計されています。
GDDR6Xの主な革新点は、PAM4(4レベルのパルス振幅変調)信号方式の採用です。これにより、従来のNRZ(Non-Return to Zero)方式を使用するGDDR6と比べて、1クロックサイクルあたり2ビットのデータを送信できるようになりました。
この技術により、GDDR6Xは1ピンあたり最大21Gbpsのデータレートを達成し、256ビットバス構成では最大768GB/sのメモリ帯域幅を実現することが可能となっています。
GDDR7とGDDR6Xはどちらも高性能なグラフィックスメモリ規格ですが、いくつかの重要な技術的側面で違いがあります:
- データレート:GDDR7は、将来的に1ピンあたり最大48Gbpsという非常に高い速度を提供します。これは、GDDR6Xの最大21Gbps/ピンと比較して、はるかに高速です。
- 信号技術:GDDR7はPAM3(3レベルのパルス振幅変調)を使用しており、GDDR6XはPAM4(4レベル)に依存しています。
- デバイスあたりの帯域幅:GDDR7は32Gbpsの速度で動作する場合、1デバイスあたり192GB/sの帯域幅を提供できます。一方、GDDR6Xは21Gbpsで動作し、1デバイスあたり84GB/sの帯域幅にとどまります。
- 電圧と効率:GDDR7は1.2Vという低電圧で動作し、1.35Vで動作するGDDR6Xと比較して、より優れた電力効率を実現しています。
- 標準化:GDDR7はJEDECによって承認されたオープン規格であり、業界全体での広範なサポートと相互運用性が保証されています。一方、GDDR6XはMicronとNVIDIAによって開発された独自技術です。
| Parameter | GDDR7 | GDDR6X |
|---|---|---|
| Max Speed | Up to 48 Gbps | 21 Gbps |
| Signaling | PAM3 | PAM4 |
| Bandwidth per Device | 192 GB/s (at 48 Gbps) | 84 GB/s (at 21 Gbps) |
| Voltage | 1.1-1.2V | 1.35V |
GDDR7とHBM3の違いは?
GDDR7とHBM3は、GPUやAIアクセラレータ向けに設計された先進的なメモリ技術ですが、それぞれ異なる目的に特化しており、異なるシナリオで優れた性能を発揮します。
GDDR7は、Graphics Double Data Rateメモリの最新世代であり、ゲームやエッジAIなどの高速かつコスト効率の高い用途に最適化されています。一方、HBM3は、データセンターやHPC(High-Performance Computing)、AI学習など、効率性とスケーラビリティが重要な超高帯域幅のワークロード向けに特化しています。
| Feature | GDDR7 | HBM3 |
|---|---|---|
| Bandwidth per Device | 192 GB/s (at 48 Gb/s) | 819 GB/s (at 6.4 Gb/s) |
| Bus Width | 32-bit | 1024-bit |
| Memory Configuration | Soldered onto PCB | Stacked DRAM in package |
| Use Cases | Gaming, edge AI | AI training, HPC, data center GPUs |
| Voltage | 1.1-1.2V | 1.1V core voltage |
| Cost | Cost-effective | Expensive due to silicon interposers and stacking technology |
| Scalability | Flexible | Limited configurability |
ユースケースの違い:
- GDDR7は、ゲーミングPCやエッジデバイスなどのコンシューマ向けGPU向けに設計されており、コスト効率と高速性能が重視される用途に最適化されています。
- HBM3は、主にデータセンターやHPC(High-Performance Computing)環境におけるフラッグシップGPU向けに使用されており、主流のアプリケーションをはるかに超える帯域幅が求められる場面で活用されます。
GDDR7は、ゲームやエッジAIアプリケーションにおいて、高速なパフォーマンスを低コストで提供する点で優れています。一方、HBM3は、AIの学習やHPC(High-Performance Computing)など、極端な帯域幅と効率が求められるシナリオで優位性を発揮します。これらのメモリタイプの選択は、アプリケーションの具体的な要件に依存しており、パフォーマンスとコストのバランスを取ることが重要です。
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GDDR7 and LPDDR5の違いは?
GDDR7とLPDDR5は、どちらも先進的なメモリ技術ですが、設計された用途が大きく異なり、技術的な特性にも明確な違いがあります。
GDDR7は最新世代のグラフィックスメモリであり、主にGPUに使用され、HPC(High-Performance Computing)、AI推論、ゲームなどの用途に適しています。非常に高い帯域幅とデータ転送速度を実現するよう設計されており、リアルタイムのグラフィックスレンダリングやAIモデルの推論など、大量のデータを迅速に処理する必要があるアプリケーションに理想的です。
GDDR7は、先進的なPAM3信号方式を採用することで、初期段階でピンあたり最大32Gbps(将来的には48Gbpsまでのロードマップあり)のデータレートをサポートし、チップ単位で128〜192GB/sという高い帯域幅を提供します。そのインターフェースとアーキテクチャは、速度とスループットに最適化されており、電力効率は中程度です。
一方、LPDDR5は「Low Power DDR5」の略で、エネルギー効率とコンパクトさに最適化されており、モバイル機器、ノートパソコン、その他のバッテリー駆動システムに最適なメモリです。LPDDR5は通常、ピンあたり6.4〜8.5Gbpsのデータレートをサポートしており、動的電圧スケーリングや複数の低消費電力モードなどの機能によって、消費電力の最小化に重点を置いています。
LPDDR5は非常に効率的で、モバイルや組み込み用途に対して十分な帯域幅を提供しますが、GDDR7のような生の速度やスループットには及びません。
| Feature | GDDR7 | LPDDR5 |
|---|---|---|
| Primary Use | GPUs, AI accelerators | Smartphones, laptops |
| Max Data Rate (per pin) | 32–48 Gbps | Up to 6.4–8.5 Gbps |
| Bandwidth per Device | 128–192 GB/s | ~34 GB/s |
| Signaling | PAM3 | NRZ (PAM2) |
| Voltage | 1.1-1.2V | 1.05V/0.9V (core), 0.5V/0.3V (I/O) |
| Power Efficiency | Moderate | High |
| Prefetch | 32n | 16n |
| Interface Width | 32 bits | 32 bits |
| Typical Application | Graphics cards, AI edge servers | Mobile devices, ultrabooks |
GDDR7は、最大限の帯域幅と低レイテンシが重要となるAI推論やハイエンドゲームなどのシナリオで優れた性能を発揮しますが、消費電力が高く、コンパクトでバッテリー駆動のデバイスにはあまり適していません。
一方、LPDDR5は省電力性と省スペース性に最適化されており、モバイルやポータブル用途に理想的ですが、GDDR7のような高い帯域幅を提供することはできません。
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GDDR7はどのようにしてAI推論性能を飛躍的に向上させるのか?
GDDR7メモリは、帯域幅、効率性、信号技術における画期的な進歩を通じて、AI推論ワークロードに対して革新的な改善をもたらします。
その仕組みは以下の通りです:
- データ集約型モデル向けの比類なき帯域幅
- 速度:GDDR7は1ピンあたり32〜48Gbpsで動作し、GDDR6Xの21Gbpsの限界を倍増させています。48Gbpsの場合、各GDDR7デバイスは192GB/sの帯域幅を提供し、AIアクセラレータが数兆パラメータのモデル(例:LLM)をデータのボトルネックなしに処理できるようになります。
- スケーラビリティ:500GB/sの帯域幅が必要なシステムでは、GDDR7チップはわずか3個で済みます。これは、LPDDR5Xモジュール13個と比較して、エッジAI展開におけるレイテンシと複雑性を大幅に削減します。
- サステナブルなAIのための電力効率
- 電圧:GDDR7は1.2Vで動作し(GDDR6Xは1.35V)、ビットあたりの消費電力を10%以上削減します。
- ダイナミック電圧スケーリング:ワークロードの需要に応じて電圧を調整することで、連続的な推論タスクを実行する電力制約のあるエッジデバイスにとって重要な機能です。
- 低レイテンシを実現する高度な信号処理技術
- PAM3エンコーディング:GDDR6のNRZ方式と比べて、1サイクルあたり50%多くのデータを送信可能であり、高いクロック周波数を必要とせずにスループットを向上させます。これにより、自動運転などのリアルタイムアプリケーションにおける推論レイテンシが低減されます。
- ミッションクリティカルな推論のための信頼性
- オンダイECC(誤り訂正機能):リアルタイムでエラーを修正し、医療診断などの高精度が求められるアプリケーションにおいてデータの整合性を確保します。
- 標準化:JEDECによって承認された技術であるGDDR7は、AIハードウェアエコシステム全体において広範な互換性と最適化を保証します。
- リアルワールドへのインパクト
- 生成AI:GDDR7の帯域幅はGPT-4のような大規模言語モデル(LLM)に対応し、テキストや画像の生成をより高速に実現します。
- 自律システム:低レイテンシにより、センサーからのデータを迅速に処理し、リアルタイムでの意思決定を可能にします。
- エッジサーバー:GDDR7ベースのコンパクトなシステムは、小売、医療、IoT分野において、データセンター並みの性能を提供します。
スピードパフォーマンスとインテリジェントな電力管理を融合することで、GDDR7はエッジAI推論の可能性を再定義しています。
続きはこちら:
GDDR7 Memory Supercharges AI Inference
まとめ
>
AI推論モデルがますます大規模かつ複雑になる中で、高帯域幅かつ低レイテンシを両立するメモリソリューションの必要性はかつてないほど高まっています。GDDR7はこの課題に応え、従来のメモリ技術を大きく凌駕する性能を提供します。
GDDR7は、1ピンあたり32Gbpsから始まり、将来的には48Gbpsまでのデータレートを実現するロードマップを持ち、1デバイスあたり最大192GB/sの帯域幅を提供します。これは従来のメモリの2倍以上であり、LPDDR5Xなどの代替技術を大きく上回ります。
PAM3信号方式の採用、信頼性向上機能、1.2Vでの電力効率の改善により、次世代GPUやAIアクセラレータの要求に最適な設計となっています。
他のメモリタイプと比較して、GDDR7はデータを大量に必要とするAI推論エンジンに効率的に供給できる点で際立っており、大規模言語モデルの高速処理、リアルタイム分析、高度なエッジアプリケーションを可能にします。
性能、スケーラビリティ、信頼性のバランスにより、設計者は現在および将来のAIワークロードの要件を妥協なく満たすことができます。業界が進化する中で、GDDR7はAI、ゲームなどの分野における革新を支える高性能コンピューティングの中核技術となるでしょう。

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